「器は料理の着物」──女将の選んだ器が引き立てる、特別な手巻き寿司のひととき
こんばんは。
女将のCHIAKIです。
先日、私どものお料理をお召し上がりになっていたお客様が、
ふと、こんな嬉しい言葉を漏らしてくださいました。
「今日は京都を旅したみたい。本当に美味しかった。」
東京の下町亀戸にいながらにして、遠く洗練された京都の空気感や、
旅先のような美食のときめきを感じていただけたこと、何よりの喜びで胸が熱くなりました。

皆様は食事をいただく時、皆さまはどのような瞬間に「幸せ」を感じられますでしょうか?
単にお腹を満たすためだけではなく、五感のすべてが満たされ、心までじんわりと解きほぐされていく――。
私たちが目指しているのは、そんな「心豊かな食の体験」です。
本日は、お客様を「おっと」驚かせ、京都のような風情を感じさせた、
当店のこだわりが詰まった最高の手巻き寿司と、それを彩る器の物語を少しだけお話しさせてください。
── 魯山人の精神が息づく「料理の着物」
かの高名な美食家・芸術家である北大路魯山人は、
「器は料理の着物である」という名言を残しました。 どれほど素晴らしい食材であっても
それを包み込む器との調和がなければ、料理の真の美しさは完成しないという意味です。

当店では、代々大切に受け継がれてきた「馬目の伝統的な器」を何よりも重んじ、
日々のおもてなしの土台として大切に守り続けております。
伝統の器には、これまで重ねてきた歴史と、お料理を格式高く魅せる素晴らしい力があります。
しかし今回、美濃の赤酢を使った特別な手巻き寿司をお出しするにあたり、
女将である私が「この一皿のために」と、
自ら足を運び、一目惚れして選び抜いた特別な器をご用意いたしました。
手巻き寿司をそっと受け止めているのは、織部(おりべ)の深い緑と、
力強い鉄絵のストライプ、そして温かみのある土肌の余白が美しい和食器です。
自由で型にはまらない力強い造形は、まさに魯山人が愛した美意識そのもの。

この器の深く鮮やかな緑色が、ウニの黄金色やいくらの琥珀色、
カニ(毛蟹)の繊細な紅白を、驚くほど鮮やかに引き立てる「補色」の役割を果たしてくれます。
料理と器がまるで一つの芸術作品のように調和し、お客様を新たな境地へと誘うのです。
伝統的な馬目の器を知るお客様にこそ、
この器と料理の新しい調和に「おっと」驚き、新鮮な感動を味わっていただける、私渾身のコーディネートです。
── 美濃の赤酢と、極上ネタの完璧なマリアージュ
この美しい「着物」に合わせるのは、
大将が一切の妥協を許さずに仕込んだ海の幸と、こだわりの赤シャリです。
シャリには、酒粕を長期熟成させて作られる「美濃の赤酢」を贅沢に使用しています。
一般的な米酢のようなツンとした尖った酸味がなく、まろやかなコクと芳醇な薫りが特徴の赤酢は、
お米の甘みを極限まで引き出し、シャリ自体を一品のお料理へと格上げしてくれます。
この赤酢のどっしりとした包容力があるからこそ、
クリーミーで濃厚なウニの甘み
プチプチと弾けるいくらの醤油漬けのコク
繊細で上品なカニ(毛蟹)の旨味
という、主役級の高級ネタたちを見事に一つにまとめ上げ、
口の中で完璧な調和(マリアージュ)を生み出すことができるのです。
── 片手で愉しむ、至高の贅沢と五感のプロローグ
この特別な手巻き寿司は、お箸を使わず手で気軽に召し上がっていただけるのも魅力のひとつです。
ですが、その手軽さとは、口に運ぶまでのすべての瞬間に「日本の美意識」が凝縮されています。
手で持つということは、お箸という道具を介さずに、
お客様が直接、お料理の温度や質感に触れるということ。
手に持った瞬間に指先から伝わる、
炙りたての海苔のパリッとした心地よい緊張感。 ほんのりと温かい、
美濃の赤酢が醸すシャリのぬくもり。 そこに重なる、
ひんやりとしたウニやカニの贅沢な重み。
口に運ぶよりも前に、手のひらと指先を通じて、すでに最高のおもてなしが始まっています。
気取らずにつまめる手軽さの中に、大将の仕込みの技と、
私が選び抜いた器の美意識がすべて詰まっている──
これこそが、ただお腹を満たしたいだけの人をも「おっと」気付かせる、
手巻き寿司だけの特別な五感の愉しみ方なのです。
── 多少の不自由の中に込める、私たちの愛
私共が惚れ込んで選び抜いたこの大切な器たちは、食洗機に入れることは決してありません。
効率やスピードが重視される時代ですが、多少不自由で、手間暇がかかったとしても、
私たちはスタッフと共に毎日、すべての器を自分たちの手で優しく包み込むように手洗いをしています。

指先で土の呼吸を感じ、器に「今日もありがとう」と語りかけるように洗う。
この一見、非効率に見える時間にこそ、器に命が吹き込まれ、
私たちがお客様にお届けしたい「おもてなし」の原点に戻るのだと感じております。
現代の視点から見れば、手洗いはナンセンスなことかもしれません。
ですが、便利さと引き換えに失われてしまう「時代の美意識」が確かにあります。

今宵も無事にお店を終え、器をひとつひとつ手洗いで労いながら、
今日お越しくださったお客様の笑顔を思い出しております。
慌ただしい日常のなかに、上質な時間が流れる割烹でありたい。
明日からもまた、皆様の五感を満たす特別なひとときをご用意して、
スタッフ一同心よりお待ち申し上げております。
▼ 今月の詳細・ご予約方法
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店舗情報【割烹 馬目】(かっぽう まのめ)
ご予約・お問い合わせ 03-3681-0945
住所 東京都江東区亀戸 6-38-8
営業時間 昼の部 11:00 〜 14:00(水・木・土)
夜の部 17:00 〜 22:00(月 〜 金)
アクセス JR総武線「亀戸駅」東口 徒歩6分
東京駅よりタクシー15分
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季節のご案内や、旬の限定酒などの最新情報をお届けしております。
つながるご縁に感謝して
どうぞご贔屓に。
割烹 馬目 女将
馬目 千晶

